心のネッシー

Seamonsters

Seamonsters

 じりじりとくすぶり続ける灰の中の赤い部分。アルビニと4人の痩せこけた英国人の屈折した感性が生み出した90年代の恐るべき怪物。不穏さがどこか不安定な音の定位と不明瞭な質感を伴う深海を思わせる爆音の中で広がっていく様を見つめる汚れた水の水族館。意図的に下げられたヴォリュームの中でモゴモゴとつぶやくヴォーカルからふいに暴発するギター、又はアコースティックな穏やかなサウンドにぶしつけに轟き入ってくる無骨なドラム。それが胸の中にある呼び名のない灰色の水のような感情のようなものと重なってモアレ状の模様から、ある角度で全てが透明になる一瞬があって、そこを通過すると、ここで鳴っているあらゆる音がまるで海底に何十万年の間横たわっているかのような穏やさに包まれていく。フラストレーションをフラストレーションでぶつけることによって別の感情に昇華するという、計算づくなぶっきらぼうさから広がる恐ろしくイマジネイティヴな音像。「心」という「海」の底にいる怪物を寝かせつけるための子守唄。

おかず五品

Best Years of Our Lives
100・ブロークン・ウインドウズ
At Action Park
Spiderland
Bizarro