美新生児
- アーティスト: Beautiful New Born Children
- 出版社/メーカー: Domino
- 発売日: 2005/10/18
- メディア: CD
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間違いなく身体に悪い。痩せっぽちでザラザラしていて、もう後がない。崖っぷちギリギリ感。確実にこのアルバム一枚で終わる感じ。
Arctic monkeysでノリにノっているDominoから、丁度そのarcticのブレイクのすぐ後ぐらいにデビューした新人バンド(リード・シンガーはSchneider TMのギタリストでKPT.MICHI.GANというソロ・ユニットもやってるMICHAEL BECKETT)。紙ヤスリの、もしくはケミカル成分たっぷりの人工着色ガレージ・パンク。意図的なわざとらしいドンシャリ音質。the fallのMark E Smithをの訛りを軽くしてインテリ度を3倍薄めたようなヴォーカルが初期wedding presentと初期pixiesが合わさったようなネジれた30分の爆躁音の中で金切り声を上げる。そんな狙いすました痩せた音像が80年代後半のイギリスのギター・バンドの煮詰まり気味の焦燥感を妙に思い出させて、個人的にはちょっと新鮮なような、懐かしくなるような、何ともいえない気持ちになる。
勿論これは過去の音楽である。新鮮味なんてひとつもなくって、最早ノスタルジーすら感じさせる。パンクはポジティヴな思考停止音楽であるということのひとつのあざといサンプルでもある。グシャグシャに歪んだ豪音の中で身体機能を活発に働かせるという、本能と無秩序の狭間で揺れ動く人間の行動のおかしさ、不条理さをニヤニヤしながら外側から見てるようなメタ的なパンク・ロック。皮肉めいたジョークをさらにその外側から嘲笑ってるかのようないたちごっこ感覚。
初期pixiesが本物のキチガイだとするなら、これはさしずめキチガイをディフォルメしたキャラクターのぬいぐるみのような存在かもしれない。
なんかずっと悪口めいたことばかり書いているように見えるけれど、私はこの安っぽさが大好きだ。単純に音響としても耳や脳に対する漂泊、洗浄効果があると思う。そしてこういう音はやはりイギリスという国からしか出現しないのだな、とも思う。状況の煮詰まり感をそのまま煮詰まりまくった音で表現すること程正直で、リアルで、切羽詰ったものはない。