よつばと!は無敵だ。

よつばと! 5 (5)

よつばと! 5 (5) あずまきよひこ著
(2006 メディアワークス


 待望の5巻。もう早速浸ってる人も多いと思います。私も勿論その一人です。

 日本のどこかにありそうな夏の日常風景の一日一日を切り取ってゆっくりと丁寧に描きあげた珠玉の作品集。主人公の無垢な行動を包む登場人物たち(とーちゃん、風香、恵那、ジャンボ、そしてヤンダでさえも)のさりげない優しさにも癒されます。でもやっぱり何より、主人公よつばちゃんの徹底的にミニマル化された「笑顔」という表情(記号)が、あらゆる小難しい思考や論理や感情を覆す「強さ」を持っているところが、この漫画の最大の魅力だと思います。

 ちっちゃい子(無知)は無敵。そこに気づいたあずまきよひこの着眼点も凄いけど、そこから徹底的に無駄なノイズを省いて、表現として純化しきっているところに、最早個人を飛び越えて、「漫画」という表現そのものがもつ強みを発見した思いです。

 それは、先程言った“どこかにありそうな夏の日常風景”を緻密に描きあげている、という点でも同じことがいえます。ノスタルジーは「ノスタルジー」と言ってしまった時点でそれは既にフィクションになってしまう。でもよつばと!の世界は現在進行形で登場人物達の視点は決して後ろを振り向かない。そしてそこによつばの極端なまでに単純化された笑顔という記号がのっかることによって、逆に“ありそうでない、ついこの間までの日本(人)”というまぼろしのノスタルジー(ノスタルジーは常に理想化される)にとても強いリアリティを持たせている。逆に言うと、現実世界を描いているはずなのに、実はこれ以上ないというぐらい非現実的な理想郷がここにある。そして、それを描けるのが漫画という表現なんだ、ということを思い出したのです。

 そういう意味で、よつばと!は無敵だ。

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「よつばと!」イメージアルバム「よつばと♪」