ドラム職人

CARPENTERS / TICKET TO RIDE (1969 A&M


カーペンターズのファーストはカレン・カーペンターが全編ドラムを叩いている。


という某うんちく番組のような事実に驚かされ(兄作曲、妹ドラムってまるでWHITE STRIPESじゃん!)急遽getしたファースト。おそらく、純カーペンターズ・ファンの間では割と評価低めであろう作品。でもいいです、これ。カレンの歌声はこの頃から既にクール&ビューティーだしリチャードの優雅なストリングス・アレンジも早くも冴えてます。

その中でもこの作品で特筆すべきはやっぱりドラム! 「YOUR WONDERFUL PARADE」のマーチ・バンド風ドラムの叩きまくりっぷりや「ALL I CAN DO」のジャジーなドラミングの格好よさったら! 彼らがこの後追及するストリングスを用いた「高品質なポップ・ソング」路線と、ここでしか聴けない硬質なグルーヴ感が加わったちょっとサイケなソフト・ロッキン路線とが混在して絶妙なバランス感覚を醸しだしているところが異質で面白いです。硬と軟の取り合わせの妙というか。

あと、この作品では珍しくリチャードがリード・ヴォーカルを努める曲もあるのですが、これがまたカレンとの対比でいいバランス感を生み出してますね。さらにさらに、このアルバムでは表題曲のビートルズの他にYOUNGBLOODSの「GET TOGETHER」やBUFFALO SPRINGFIELDの「NOWADAYS CLANCY CAN'T EVEN SING」なんて60年代の西海岸のラヴ&ピースを象徴する曲をカーペンターズ流にクールにカヴァーしていて、そういった時代性が反映した選曲(そういえば裏ジャケのリチャードはROGER MCGUINNに似てる)も興味深いです。

もし、彼らがこっちの路線(妹ドラムでツイン・ヴォーカル)を歩んでいたら果たしてどうなっていたのか? おそらくこっちはこっちで悪くなかったんじゃないか(売れなかっただろうけど、拒食症にはならなかったんじゃないか、とか)と、思わず妄想を逞しくさせてくれる作品です。

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