9月21日の映飯

真・雑音伝説


非常階段/真・雑音伝説(テイチク/アルケミー)

先日のALCHEMY&PSF20周年記念ライヴ@初台DOORSでのインキャパシタンツのライヴが余りに素晴らしかったので思わず非常階段のベスト+DVD買っちゃいました。まだ映像しか見てないけどこりゃスゲエっす。まず『蔵六の奇病』にも収録されてる81年の新宿ロフト、画面が全体的に暗くて各自が何やってるかいまいち解りにくいのだけど、とりあえず異常な事態が目の前で起きているというえもいわれぬ迫力はヒシヒシ伝わってきます。発狂というよりは混乱ですね。基本的に関西の人って「カマしてナンボ」っていうところがあると思うんですが(反対に関東の人は「スカしてナンボ」?)、そのカマしっぷりが非常によくでている絵だと思います。その中でも終始クールにサックス吹いてる人がカッコいい。でも2004年の今見るとこういった狂騒状態が幾分牧歌的に見えてしまうというのも怖い話です(その現在の状況が)。次はJOJO広重氏は参加していないらしい81年の同志社大学の教室での映像。セッティングしている時の「静」の状態からトンカチ持った男が突如乱入してきて一気に全員がぶっ壊れる「動」の状態へのコントラストが本当に素晴らしい。美すら感じます。その後はもうひたすら教室が破壊されていくのを見守るしかないわけです。さっき書いた「カマしてナンボ」の極致だと思います。DVDで映像として見ているからこうしてポテチなんか呑気に食いながら見れるわけですが、実際の現場にいたら私は確実にオシッコちびってたでしょう。この感覚はあれですね、昔よくやってた(今でもあるのか?)ニュースとかの「衝撃映像」の物凄い事件が起こった直後の現場の絵にも通じるイヤーな緊張感ですね。特にギターの人の壊れ方は尋常じゃあない。手前でPAらしき人が機材を頑なに守っているのがいじましい。っていうか、よく許したなこれ。大学側が。なんて言って借りたんだろう?弁償代は?とかいろいろ考え出したらキリがない位素晴らしい映像です。必見。87年の渋谷ラママ、編成はJOJO氏(ギター)、ミカワ氏(ノイズ)そしてJUNKOさん(絶叫)の三人。前二つとは打って変わってこちらは非常に静的な印象を受けます(ミカワ氏最初座ってるし)、でもピンと張り詰めた緊張感の質は全然負けてません。最後には全員でFaustの「No Harm」のフレーズ「Daddy, Take The Banana, Tomorrow Sunday!」(だと思う)を絶叫するという絵がかっちょええですね。個人的にはJOJO氏が倒しかけたマイクスタンドを、絶叫しつつもさりげなく立て直すミカワ氏のマメさにグッときました。JUNKOさんのクールな佇まいも実に絵になってます。最後は去年の12月の秋葉原のgoodmanで行われたテイク。編成は前述の三人にプラスしてincapacitantsのコサカイ氏(ギター)、そしてドラムにdoodlesの柴田嬢が参加しての5人体制。ツインギターという珍しい編成で、あのお馴染みのこぶしを利かせたスタイルで弾きまくるJOJO氏と巨体をプルンプルンふるわせながら一心不乱に弾きまくるコサカイ氏のツインリードが実にいい絵。それを援護射撃するミカワ氏の機材さばきとジュンコさんの絶叫と柴田嬢のプレイもいい感じにやかましいです。ああもううるさいったらありゃしない。JOJO氏が途中退場してしまうのがちと惜しいですが、後半ではジュンコさんと観客との微笑ましい交流(?)なども見られ、非常に熱のこもった演奏を展開。そして最後はもはや恒例となったコサカイ氏のマイク絶叫&観客席に雪崩れ込みで終了。終わった後の気持ちよさはある意味爽快ですらあります。通して見て気づいたのはどれも画質とか撮り方なんかはバラバラですが、それが(狙いではなく偶然だとは思うけれど)非常に面白い効果を生んでいるということ。例えば最初のテイクの映像はまるでエフェクターのディレイみたいに者が動くと動く前の黒い影の残像が一瞬残るのですが、これがある種のサイケデリックな効果を挙げている。同志社のテイクは画質の青白さと照明(蛍光灯)の明るさが独特の空気感を演出していると思うし、ラママのテイクは画面中央でぼうっと眩しく光っているライトがなにやら幻惑的。最後のテイクはライティング効果とかがライヴの熱気をうまく盛り上げていて、他の3つとの対比が面白い。ということで4本ともそれぞれ独特の空気感を孕んでいて、決して記録としてだけではなく映像作品としても評価できるものだと思います。あとはSOB階段とPISS FACTORYをDVD化して欲しいです。