今日の音飯

terry reid


TERRY REID / RIVER (ATLANTIC)
 揺らめく水面。昔からこの手のジャケには弱いのです。最後の文字が横に伸びているタイポグラフィも実にいい感じ。あのLED ZEPPELINDEEP PURPLEへのヴォーカル加入の誘いを蹴って自らの音楽道を突き進んだテリー・リードが73年に発表した4枚目のアルバム。この頃の多くの英国のミュージシャンが憧れていたアメリカ南部の音楽への憧憬を独自のやり方でしなやかに描ききった傑作。特に元KALEIDOSCOPEのDAVID LINDLEYによるスライド・ギターをフィーチャーしたA面は絶品で、緩やかな川の流れのようなゆったりとしたバンド・サウンドの中をテリーのちょっと甲高い声が実に気持ち良さそうに泳ぎ廻る様が素晴らしい。中でも2曲目の「AVENUE」なんかは月の出た夜のような、どこかルナティックな感覚を内に秘めた曲調とヴォーカルに、何度聴いても背筋がゾクリとさせられる。B面ではバンド・サウンドから一転してテリーのヴォーカルとギター、そして簡素なパーカッションというごくシンプルなサウンドを展開。特に表題曲の「RIVER」は背後に水音のような小さなノイズが聞こえてくる、ちょっと不思議な曲。続くラスト2曲は完全にテリー自身の弾き語りで、その音数の少ない演奏と彼の歌声からはどこか幽玄ささえ感じさせる。それはまさに墨の濃淡で世界を描ききる水墨画の趣にも通じるものがある…っていうのはジャケから連想した強引なこじつけだけれど、蒸し暑い晩に縁側で涼みながら風鈴の音と共に聴いたら最高かもなぁなんて思ったりもして…(おっさんか)。あと、この流れゆく川を映したジャケには当時のテリーの心情が反映されてるのかな〜とか色々と想像しながら聴くのもオツです。ま、ともかく、これもまたSOUTHERN COMFORTと同様に英国からしか生まれ得ない米国音楽のひとつ。