Jukka Tolonen / SUMMER GAMES (Love)


 そしてこれはウィグワムのギタリストのソロのセカンド(73年)。ジャズ風味に溢れた、決してギターだけに偏らないインストゥルメンタル作品で、曲自体の持つ瑞々しい情感と、フルートなんかもフィーチャーされたひんやりとしたクールな音の感触が耳に心地良い。ブックレットには「百人一首」の大江千里(あの黒ブチメガネの人じゃないですよ)の句「月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど」のフィンランド語訳(? 原文の英訳をフィンランド語化したものと思われる)が載っていて、これは「Thinking Of You In The Moonshine」という曲の引用元ということを示しているものだと思われる(ノルウェーの尺八みたいな音色のサックス奏者Arve Henriksenのファースト『Sakuteiki』が平安時代に書かれた日本最古の庭園書『作庭記』に由来していたことを思い出す)。こういった異国、未知なるものへの感心が「現地の人が実際に聴くと恥ずかしい勘違い系」に陥らず、しっかりと対象への敬意を保ちながら、その世界観を壊さない程度の独自の解釈で扱われていて、例えば「Thinking Of You〜」のしっとりとした情感からジャズ・ロックへの展開のスムーズさや「Impressions Of India」でのインド的旋律の奏で方のまさかの爽やかさなどを聴くと、「洗練」という北欧音楽ならではの特色を逆に強く感じさせるのが面白い。タイトル曲「summer games」(=夏の愉しみ。大江千里の句と対比になっている?)の、もはやソフトロックというかスウェディッシュ・ポップ的といってもいいような清涼感溢れる軽やかさはやはりこの地でないと出てこない音の質感だと思います。



それにしてもウィグワムからはこの他に鍵盤奏者のPekka Pohjolaもソロ作を出していて、それもかなり評価が高いそうなので、実はウィグワムって地味にすごいんじゃないかと思い始めてきた今日この頃。