blue

  • Verve / Blue (HUT 1993)

初期のヴァーヴは凄かったというお話。


これはヴァーヴの93年発表の4枚目のマキシ・シングル。まさに初期ヴァーヴの魅力を凝縮した一枚。


 まずポップな表題曲の「Blue」。サビの「ブルゥ〜♪」で滲ませる哀愁が正しく70年代ブリティッシュ・ロックの香りを今に伝える名曲である。テープの逆回転をさりげなく溶け込ませる60年代サイケデリアの手法を応用した巧みな演出も憎い。もう少しビートを強調すればダンスフロアにも対応可だったかもしれない。しかしこの曲のキモはリズム隊ではなく、ギターの強烈なカッティングによるグルーヴなのだ。最後のパートで「ガシャゴショガシャ」という轟音に雪崩れ込んでくる瞬間のカタルシスはこの頃のヴァーヴでしか得られないものだ。続く2曲目「Twilight」は気だるげなフォーキー・トラック。鳥の鳴き声が左右のスピーカーで囀るアレンジ(ヘロンを意識?)が音響的に面白い。ハープもいい味。3曲目「Where The Geese Go?」も同様にスロウなトラックだがこちらは再びテープの逆回転を導入するなど、よりトリップ色が強い。最後のシングル編集盤のタイトルにもなった4曲目「No Come Down」は、これまたけだるい、幻想的な曲調。後半の盛り上がりはちょっぴり中期のCanを思わせるところも。いずれも4分前後で終わってしまうのが惜しいくらいの名曲揃いだ。

 しかしやはり何といっても初期のヴァーヴの魅力は表題曲で聴かれるように、浮遊感たっぷりのニックのギター・サウンドがリチャードの自己顕示欲の塊のようなヴォーカルに煽られて、全体としてダイナミックな、まるで嵐のような音空間のうねりを生み出していた点に尽きるだろう(。この大仰なまでのサイケデリア空間はスケールの大きさという点で当時の他のシューゲイザー/サイケ系のバンドには比肩できる存在がいない(挙げるとすればオアシスか。しかし初期の彼らは演奏面での魅力にやや乏しい)。93年という時代性を考えてみても(丁度シューゲイザーが終息を迎え、巷ではグランジ・ブームの真っ只中の状況下)シュー・サウンドをそのタフな胃袋で飲み込み消化し、「90年代型の最新英国式サイケデリア」として発展昇華させることのできた唯一のグループだったのではないだろうか。さらにヒプノシス風のジャケの統一されたデザインが、彼らが60年代末のサイケデリアから70年代のプログレに至る英国ロックの由緒正しき末裔であることをそれとなく匂わしていることも特筆すべき点だろう。そう、ヴィジュアル的にもこのバンドは完璧だったのである。そして、このシングルにはそういった当時の彼らの特徴が実にコンパクトな形でパッケージングされているのだ。

それにしてもこの作品のシングル・チャートの最高位が「69」位というのは偶然とはいえちょっと出来すぎなんじゃないだろうか。