何か甘い残り香

Remains Of Something Sweet

  • Seashells / Remains Of Something Sweet

 04年作。9年ぶり。伝説のスウェディッシュ・バンド、まさかの復活です。こりゃたまげた。95年に彼らが唯一残したフル・アルバム『We Rob Banks』(邦題:恋の銀行強盗…だったハズ)は、シャープに駆け抜ける疾走感とまるで60年代の映画を観ているかのようなノスタルジックなアレンジ、そしてどこを切っても湧いてくる甘酸っぱいメロディ、さらにダメ押しで必殺の名曲「lovebirds」などなど、所謂一般的な意味での「ギタポ」というジャンルの音楽に必要とされる要素を一部の隙もなく兼ね備えた超高性能ギターポップとして、巷のギタポ・キッズの間で永らく愛され続けてきたスウェディッシュ・ポップ(スウェポ?)史だけではなく90年代ギタポ史上に燦然と輝く名盤なのでございます(ギタポギタポ言い過ぎ)。そんな彼らの9年ぶりのアルバム。恐る恐るプレイヤーにのせてみました。


 以前よりちょっぴりグルーミーになりましたね。って、これは予算を抑えたレコーディングに拠るものなのかなー。基本的な路線に大きな変化はありませんが、やはり悲しいかな、あの頃の輝きは正直感じられません。何かが失われてしまった音。それでも、ヘンに背伸びすることなく馬鹿正直なまでに「ティーンエイジャーの視点から見た恋愛観を題材にし、ギター・サウンドを主軸においたポップ・ソング」を奏でようとするその姿勢にちょっぴり感動です。9年という歳月から失われたもの、得たもの、色々あるけどやっぱり自分はこういう音が好きだしこういう音しか出せないんだっていう心意気にちょっとジンと来ますね。それでも個人的には3曲目のサビの部分の不思議な後味(どこか甘い残り香のような空気)があの頃のシーシェルズの最良の部分を思い起こさせて、ノスタルジーの上にさらにノスタルジーがのっかった二重のノスタルジアを感じてしまいます。そう、ギター・ポップにホンの小さじ一杯の狂気。これこそが彼らの(そして同世代のpuffinにも通じる)最大の個性だったのではないかな、と。