11月15日の音飯

hollywood dream

THUNDERCLAP NEWMAN / HOLLYWOOD DREAM (POLYDOR)

 一度聴いたら誰でも口ずさめそうな名曲「SOMETHING IN THE AIR」を69年に英国で大ヒットさせた彼らの唯一のアルバム。元々はTHE WHOのPETE TOWNSHENDのサイド・プロジェクトとして始まったバンド。ピートの友人だったドラマーのSPEEDY KEEN(かっちょいい名前!)と太っちょのヒゲメガネ・ジャズ・ピアニスト(元郵便局員)ANDY NEWMANと、若干16歳の美少年(?)ギタリストのJIMMY MCCULLOCH(後にPAUL MCCARTNEYのWINGSに参加)という、「メガネ・デブ&美少年&ロッカー」なる、なんとも珍妙な組み合わせの三人組が織り成す英国田園ポップは一発屋で片付けるにはあまりに惜しい作品なのです。まずKEENの書く、フォークを基盤にしたのんびりした独特のタイム感(TEENAGE FANCLUBのゆったり感にも通じる)をもったメロディとちょっぴり甲高いヴォーカルの魅力、そしてそこにのっかるANDYの妙にたどたどしいヘタウマ(?)な鍵盤プレイと随所随所で切り込んでくるJIMMYの16歳とは思えない鋭いギター(そしてピートの味のあるベース)が渾然一体となって、オールド・タイミーともポップ・サイケとも言い切れない、不思議なバランス感をもったポップ・ソングを奏でているのです。一見何とも能天気で牧歌的な曲がずらっと並んでいるだけにも聴こえるのですが、よく聴くとシングルのタイトルどおり「何かが空気に混じってる」感があるんですね。漠然とした薄いもやのような、霧の様な何か。それはやっぱり69年っていう時代の変わり目の時期特有の不穏さのようなものなのではないかと個人的には妄想してしまいます。「嵐の前の静けさ」というか「嵐の前のノスタルジア」というかなんというか。69年の英国の空気を吸い込みたかったらこちらまで。