今日の音飯

southerncomfort


SOUTHERN COMFORT / SOUTHERN COMFORT (MUSKRAT)

紅茶の国の人だから。どっかで見かけたようなフレーズだけど、もしこのアルバムにキャッチコピーつけるとしたらもうこれしかないだろう。ジャケにどーんとおかれたティーカップになみなみと注がれたロイヤル・ミルク・ティーの、今にもこちらに匂いたってきそうな様はそのままこのアルバムの中身を的確に表している。元FAIRPORT CONVENTIONのIAN MATTHEWSをメインにすえたIAN MATTHEWS' SOUTHERN COMFORTからイアンがソロ転身のため脱退、残されたメンバーで作られたのがこの72年発表のアルバム(他にアルバム2枚有)。イアンがリーダーだった頃の、当時のアメリカン・ミュージックへの憧れを素直に反映させた音楽性には基本的に変化がないのだけれど、こっちの方がより自然体で、英国的。バンドの2人のソングライターは決して過剰にドラマチックになったりしない、さりげないけれど心の琴線をふわっとくすぐるような曲を書き、ちょっぴり浮遊感すら感じる軽快なバンド・アンサンブルがそれを支える。彼らがお手本にしていたほろ苦い海の向こうの音楽のように、どっしりとルーツという地面に足を下ろすわけでもなく、片足けんけんしながら「やっぱ俺らイギリスの田舎のパブの出だしなぁ」っていうちょっぴり自嘲気味のペーソスが隠し味となって、アルバム全体にマイルドな味わいと軽快さをもたらしているような気がする。そしてこの心地のいいやるせなさとでもいうべきまったり感こそは、イギリスの人にしか出せない味わいなのかもしれない。アルバムの最後を飾る曲の持つ、ちょっと淋しげな浮遊感に浸っているとそんな思いが沸いてくる。