今日の音飯

FRAZIER CHORUS / RAY (VIRGIN)
 80年代後半のVIRGINレーベルには意外に優れたバンドが多かった気がするのは私だけだろうか。SCRITTI POLITTIを筆頭として、IT'S IMMATERIALやWORLD OF TWIST、そしてこのFRAZIER CHORUSなど、どこか共通して感じられる気品のようなもの。嫌味になる手前の程々の洗練度と下世話さのバランスが絶妙なグループばかりだった。元々は4AD出身のこのバンド(フルート奏者である女性メンバーは後にCREATIONのALAN MCGEEの奥さんになる)も、90年発表のこのセカンド・アルバムではLIGHTNING SEEDSのIAN BROUDIEプロデュースで思いっきり売れ線エレポップに走っているのだけれど、ボソボソと語りかけるようなゲイっぽい男性ボーカル(最近ではALUMINUM GROUPがこのスタイルを踏襲していた。…彼らもゲイだ)と抑制された音作りにはニューウェーヴの残り香(同時期のTALK TALKやBLUE NILE、更にはFELT辺りの思慮深さにも通じる)が感じられる一方で、当時出てきたシューゲイザー・バンドが持っていた新しい感覚のライトな覚醒(浮遊)感を融合させ、さらにそこから不純物を取り除いて聴き易いポップに仕立て上げたようなスタイルは斬新といえば斬新だったような気がするし(ある意味ニューウェーブシューゲイザーの狭間に落ちたニッチな存在とも言えるか)、さらに当時まだまだ高価だったCDならではのクリアーかつデジタルな澄んだ音質が耳に響く心地よさを初めて意識的にこのメディアに焼き付けることに成功した初期の例のひとつだとも言えるだろう。今聴いてもやや軽すぎるきらいのある幾つかの曲を除いてその鮮度は落ちていない。それにしてもこのイルカのジャケのイメージと音とのマッチングは見事としか言いようがない。