12月6日の音飯

galactic ramble


PARAMETER / GALACTIC RAMBLE (KISSING SPELL)

 70年の英国自主制作アシッド・フォークもの(FROM KISSING SPELL)だそうですよ。しかし、聴いてビックリ、殆どこれ巷で言うところのロウファイじゃないですか。それも特上の。録音やたらガサガサいってるし。音ショボいし。演奏下手だし。声虚ろだし。なんていうか視線が宙に彷徨ってるような漠然とした感覚に全編貫かれています。最初聴いた時はてっきりキッシング・スペル得意のデモ音源集を掴まされたと思ったんですが、よくよくブックレットとか見てみるとどうやらこれ本当にアルバムとして録音されたものみたい。しかしこういうものが当時から(自主制作とはいえ)既に存在していたとなると90年代に有り難がって聴いてたロウファイとは一体何だったんだろうか?とちと考えさせられます(でもあれがあったからこそこういうものが普通に聴けるようになったという部分もあるけど)。まぁうだうだ考えるより時代とか価値観がグチャグチャになった今の耳で聴いて楽しんじゃおうってことで。とくにSMOGとかSUPREME DICKS辺り、というか初期のDRAG CITYのうだつのあがらないダウナー感(褒めてます)をこよなく愛する人にはかなりオススメのアルバムですよ(あれほど豪快にぶっ壊れてないですが)。しかしそんなひび割れた音の中にも、英国人ならではの生真面目さ、神経質さを湛えたリリカルな旋律がまるでロウソクの青白い炎のように揺らめく様はうっすらと幻惑的な美を感じさせてとても味わい深いのです(どうもライナー読むとSYD BARRETT在籍時のPINK FLOYDに影響受けてるみたい)…って書くとやや大袈裟かな。とにかく聴いてるうちに得体の知れない空虚感が鼓膜を伝って脳の中にじわじわ染み出してくる危険なブツであることはたしか。脳内漂白剤とでも言っときましょうか。