今日の音飯

MIKE ABSALOM / MIKE ABSALOM (VERTIGO)
 71年作。渦巻きマークでお馴染みVERTIGOレーベルからのリリース、さらにこのジャケ(YESの作品で有名なROGER DEAN作)とくれば当然バリバリのアンダーグラウンドサウンドを想像してしまうのだけど、スピーカーから流れてくるのは意外にもアコースティック・ギターとヴォーカルによって紡がれる実にほのぼのとした歌もので、まずその落差にズッコける(同様の例にPETE DELLOのソロ作がある。そういえばこれもROGERのジャケだった)。しかし、内容の方は素晴らしい。ABSALOM氏の語りかけるようなヴォーカルと軽快なアコギのギターワーク、そしてペーソスが入り混じった物語調の歌詞などから成り立つ、「粋」を絵に描いたような曲の数々を聴いていると、思わず“英国のグッドタイム・ミュージック”なんていう言葉が浮かんできてしまう。派手さはないが味わい深いアルバムだ。プロデューサーはあのNIRVANA(勿論英国の方ね)のPatrick Cambell-Lyonsで、余計な装飾を加えず、必要最小限の音で構成することによって彼の歌の魅力を浮き出たせることに成功。結果として、内容と非常に落差のあるジャケに彩られた、優れたシンガーソングライター(かつストーリーテラー)のアルバムがひっそりと誕生したというわけだ。ちなみに、このmike氏、いまだ現役で公式ページ(http://www.mikeabsalom.com/)もしっかりある。ここではこのアルバム収録曲の歌詞やABSALOM氏自身のイラストによる曲解説(?)なんかも載ってて面白い。現在はアイルランドに引っ越して画家とかハープ奏者とかスポークン・ワード、子供達相手のエンターティナーなどいろいろなことをやっているそうな。