今日の音飯

THE LILYS/ASPERA AD ASTRA / SPLIT ALBUM (TIGERSTYLE)
 2000年に突如発表されたLILYSとASPERA AD ASTRA(現在はASPERAに改名。過去ログにレビュー有)のスプリット・アルバム。全く意味不明のジャケ(2匹の猿が巨大なミミズを引っ張り合っている)からしてなんとも不思議な雰囲気に包まれた作品で、まずリリーズの方は93年後半から94年前半までに録音された未発表音源を収録。時期的にはファースト(In the Presence of Nothing。92年)とセカンド(Eccsame the Photon Band。95年)のちょうど中間にあたる頃のもので、音もまさにそんな感じ。美しいけれどどこか血が通ってないような冷めた印象を受けたファーストから、94年に発表されたミニ・アルバム(A Brief History of Amazing Letdowns)でのバンド・サウンドへの若干の揺れ戻しを経て、極端に音数を減らし、最早彼岸の境地に達してしまった感のある傑作サード。この音源はそんなサード・アルバムの時期に最も近い。よって、サードのデモ音源のようにも聞こえるが、サウンドが未加工な分だけKURT HEASLEYが書く曲の内包するどこか漠然とした空気が彼の全作品中、最も濃厚に漂っていると思う。また参加メンバーのクレジットがないなど、ミステリアス(というかぶっきらぼうというか)なところも相変わらずだ。一方のアスペラはこの頃はまだ変態エレポップ路線ではなくROLLERSKATE SKINNYフォロワーの時期だが、音そのものの完成度はこの頃から非常に高かったということに驚かされる。それぞれの録音時期は若干異なるが、オブスキュアな雰囲気が極めて濃厚という点で共通点が多く、殆ど違和感なく聴けるのが凄い。これがどういう意図で発表されたかはいまいちわからないのだけれど、フィラデルフィアのサイケ(シューゲイザー)シーンの新旧バンドの対比はなかなかに興味深い。ひょっとしたらジャケの2匹の猿にはこの二つのバンドの姿が投影されているのかもしれない。では、引っ張り合っている巨大なミミズは何だろう?(途中で切れちゃってるし)…何だか意味深なようで全く意味がないようにも思える、そんなところもこの二つのバンドの音を端的に表しているような気もするし、しない気もする。