今日の音飯

Mystic Chords of Memory

Mystic Chords of Memory

 2004年作。伝説のEMO COREバンドSTRICTLY BALLROOMの元ヴォーカルで、西海岸の一癖あるミュージシャンが勢ぞろいしたカントリー・サイケ・ポップ・バンドBEACHWOOD SPARKSの元ヴォーカリストでもあったCHRIS GUNSTのソロ・ユニットのデビュー作(TYDEのBEN KNIGHTも参加)。ディレイが多用されるアンビエントサウンドスケープとどこまでもジェントルな彼の歌声がひとつに溶け合って、まさに夢見心地の音空間を創出。この作品が面白いのは暖色系のポップさを携えていることで、このほのかな明るさは、寒色系の音が多いこの系統の音の中では貴重な個性だと思う。それはひょっとしたらアルバムに参加してる元AISLER'S SETの女の子JENのおかげなのかもしれない。フワリと宙に浮いているけど決してトリッピーではなく、まるでMONKEESの「Porpoise Song」(『Head』に収録)を40分間引き伸ばしているかのような、もしくはMERCURY REVの『See You On The Other Side』やLILYSの『Eccsame The Photon Band』をさらに蒸留して素材の旨味をとことん引き出したかのようでもある。PINK FLOYDから続く「浮遊ポップ」の歴史にまた新たな一枚が刻み込まれた。そんな印象を抱かせる一枚だ。特にこの季節に聴くと身も心もとろけそうになるので要注意。それにしてもこのジャケは…猿?