今日の音飯

NEW MUSIK / ANYWHERE (EPIC)
 プロデューサーとして、さらに日本では高橋幸宏との交流でも有名なTONY MANSFIELDのソロ・ユニット、ニュー・ミュージックのセカンド。解説でも丁寧に触れられているように、当時の電子楽器の発達であるとか、YMOとの交流、影響とか、そういった歴史的な位置づけは個人的にあんまり気にならなくて、とにかくこの音の立体感の心地よさに惹かれてしまう。歪みのないスクエアな音像から生まれるシャープな空間性、無駄のない造形感(音作り)、そしてそこにぽっかりと生まれた空間(空白)の気持ちよさ。まるでジャケットの空模様のように雲の合間に果てしなく広がっている青い空間のような、何もないことの気持ちよさ。言うなれば肉体性の放棄ではなくて、空間性の復権? そういう感覚を持ちつつ、あくまでポップ・ソングのラインギリギリで踏みとどまっているそのバランス感が絶妙なのだ。そして20年経った今という時代だからこそ感じられるアナログなハイファイ感覚。さらに同時期に活躍したTHOMAS DOLBYや後のPREFAB SPROUTなんかにも通じるヴォーカルの蒼さとメロディ感覚。そして歌詞に潜む虚無感。全てが完璧。まるでスタジオではなく無菌室で録音されたかのような、純度100%の人工ポップ・ソング集。