今日の音飯

FREE DESIGN / STARS/TIME/BUBBLES/LOVE (VICTOR)
 常日頃からポップポップと騒いでいる小生ですが、ポップと一口に申しましても色々あるわけでございます。例えば「お上品」なポップもあれば「下世話ー」なポップもある、その皮膚感覚は人によって様々ですが、私の感覚から言うと例えば70年代のイギリスのモダン・ポップな方たちは(パイロットやクイーン、スパークス辺り)は一見(ルックスが)前者のように見えて実は揃いも揃って後者に属するわけであります。そしてそういう下世話でうさんくさーいところがどうしようもなく人間的で、小生のたまらないツボでもあるわけです。一方でどうしようもないくらい生まれつき「お上品な」方たちも存在するわけであります。普通ならそういった、いけすかない輩は敬遠するのですが、こと、このフリー・デザインだけはその洗練っぷりがもうハンパじゃないので認めざるを得ないという状況なのです。60年代後半のアメリカの男女混声ヴォーカル・グループで、ジャズからポップスまで幅広い音楽性を備え、日本ではコーネリアスのお墨付きでも有名な彼ら。そんな彼らの最高傑作と言われているこの『星時泡愛』は一曲目の出だしの硬質なグルーヴ感から一気にもってかれます。しかもグルーヴィーなのに常に基本はモデル立ちというか気品を損ねないところが実にクールでカッコいい。そしてこの姿勢で最後まで貫き通すところに逆に漢気を感じます。歌詞も実は結構ブルーだったりして、先の一曲目は「嫌なことばかりだからシャボン玉飛ばそう」っていう溜まったフラスレーションをシャボン玉に喩えて歌った鬱曲なのです。でも、その後でローラ・ニーロのカヴァー「タイム・アンド・ラブ」で「時間と愛だけが癒してくれる♪」なんて歌っちゃう心憎い演出は、なんだかちょっとしたミュージカルを見ているみたいなカタルシスもあります。バックのジャジーかつソリッドな演奏もいい仕事してますし、とにかくプロ根性と高いアーティスト性が高次元で発揮された珠玉の一枚と言えるでしょう。だから「上品」の裏側に隠された「凄味」を感じると言う点で、彼らこそまさに文字通り「ソフト・ロック」(「柔らかいけど本当は岩」)と呼ぶのにふさわしいのかもしれません。なんちゃって。ところで彼らは本国アメリカでようやく最近再評価されてきたみたいで、カタログが徐々に再発されてきています。そんな中で、リミックス盤なんてのも出まして、参加メンツがあのSTONES THROWMADLIBPEANUT BUTTER WOLF、さらにMELLOWとかBELLE & SEBASTIANのCHRISとかなんだかエラいメンツが揃ってます。音の方も彼らの洗練された感覚とヒップホップのある意味下世話な音作りが融合してなんだか面白い音になっているので、興味のある人はチェックしてみては如何でしょうか。