今日の音飯

TOM ZE / TOM ZE
とにかく妙なアルバム。ブラジルという熱帯雨林地方が産んだ奇才(と呼ばれる男)、トン・ゼーの68年発表のデビュー・アルバムはまさに熱帯で見える陽炎のようにチラツク音像の向こうにうっすらと見えるペイズリー柄で覆われた幻覚が招く熱病陽性アシッド・ポップ。ユラユラとしつつも派手な管楽器隊の華やかさ、ふにゃふにゃと掴み所皆無な能天気でポップなメロの気持ちよさ、そしてヘロヘロでうさんくささ最高潮のトン・ゼーのヴォーカルらによるトリプル効果でぬるま湯感覚満点なビバノンなアシッド・バスに飛び込め! これは薬用成分の他にいろんなものが浮いちゃってる温泉に肩まで浸かって100数えさせられてる感じ(しかもいつも99でリセットされてしまう)。もしくはRED KRAYOLAのMAYO THOMPSONがMUTANTESやOF MONTREALの曲をノリノリで歌ってるような。そんな軽妙さとフニャフニャさ加減の絡み合い騙し合いが唯一無比としか言いようのないステレオ歓楽街を空間に創出。一時期音楽活動を離れていたらしいこの人も90年代に入ってDAVID BYRNEによって再発見されてからは、アクセル全開で精力的にヘンなことやってるようだ(最近見た映像ではトンカチでお互いのヘルメットを叩き合って音を出してた)。そんなブラジルのヘンなおじさんの出発点もやっぱり相当ヘンだった。