今日の音飯

ARC / AT THIS... (DECCA/SI-WAN)
元SKIP BIFFERTYのメンバー二人(MICK GALLAGHERとJOHN TURNBULL)によって結成されたバンドの71年発表のファースト。ブルースを底辺に、そこからサイケ、更にハードロックへと発展していく混沌とした時代にふさわしい、様々な要素が絡み合った、良く言えば複雑な、悪く言えばとっちらかった音楽性がこの時代特有の独特の匂いを発している。そこを美味しく思うか、うざったく思うかで評価は違うと思うけど、個人的には極上の味わいだ。それはうっすらとサイケの残り香がそこかしこに感じられるからで、SKIP時代にも他のサイケバンドとは一線を課していた彼ら特有のアシッド感はニュアンスを若干変えつつここにも引継がれている。さらに純粋に曲のクオリティが高く、演奏もじっくりと聞かせるものがあり、まさに隠れた名盤と名乗る資格は十分に有していると思う。ものっそい地味だけど。ボーカルが前任のGRAHAM BELLほど個性に欠けるのも地味さに拍車をかけている。しかし彼らはこの後BELL+ARCとしてベルを再びボーカルに迎えてアルバムを残しているらしいのでそれも是非機会があれば聴いてみたい。とにかくこのアルバムは聞き込めば聞き込むほど増してくる深い味わいに満ちた英国ロックの極上品であることは間違いない。